戦前までの日本人であれば、「武士は喰わねど高楊枝」という風に、手元にお金が無ければ泰然として我慢する のが日本男児である、という美学を誰もが持っていました。
また、人様にお金を借りることを極力避けて、使う ときは貯めてから使え、という概念や、回りに迷惑をかけることを恥とする考え方が、広く一般に浸透していま した。そういった意味では、割賦販売あるいはクレジットカードといった販売促進商法は、日本人の気質にはな かなか受け入れられない部分があったに違いありません。
クレジット産業が今日のように市民権を得るには、や はり戦後の高度成長期を待たなければならなかったのもうなずける気がします。
戦後の日本は、それまでの伝統 や武士道的な考え方が完全に否定され、経済的にも急速に発展したため、一気に享楽的な国民性が定着しました 。その一方で、常に右肩上がりの経済成長と安定した終身雇用制度の確立、国民年金制度の完成によって、60 歳の定年時には、全ての日本人が相当の資産家になることが約束されたのです。
「30年後にはお金持ちになっ ているはず」というのであれば、その30年後のお金を担保に、先にマイホームや日用品を受け取った方が良い 暮らしができる、と誰もが考えます。
すなわち、日本でクレジット産業がこれだけ繁栄することができたのは、 老後の生活が保障されるだけの磐石な国家体力と、定期昇給や莫大な退職金を約束する終身雇用制度が、しっか り確立されていたからに他なりません。
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